SPF・PA値の測定方法とは?in vivoとin vitroの違いを専門家が解説

日焼け止めの性能を示すSPFやPA。これらは実際にどう測られているのでしょうか?人の肌を使う「in vivo」と、機械で行う「in vitro」という2つの測定方法があります。本記事では、その仕組みや信頼性の違い、最新の国際基準まで、化粧品開発の現場視点で分かりやすく紐解きます。

1. SPFとPAの違いって?あなたを守る「数値」の正体

結論からいうと、SPFは「肌が赤くなるのを防ぐ目安」、PAは「肌が黒くなる(エイジングを招く)のを防ぐ目安」です。

なぜなら、太陽から届く紫外線には大きく2つの種類があるからです。

  • UVB(紫外線B波): 短い時間で肌に炎症(サンバーン)を起こし、真っ赤にさせる強い光。
  • UVA(紫外線A波): じわじわと肌の奥まで届き、黒くさせたり、シワやたるみの原因(光老化)を作ったりする光。

具体的には、SPFはUVBを防ぐ時間を何倍に伸ばせるかを表し、PAはUVAをどれだけカットできるかを「+」の数で示しています [4]。

したがって、私たちが日焼け止めを選ぶ際は、レジャーならSPF50、日常ならSPF30といったように、自分の活動に合わせてこれらの数値をチェックすることが大切なのです。

2. 測定方法は大きく2つ!「人の肌」か「機械」か

結論として、日焼け止めの数値は「実際に人の肌に塗って試す方法」と「人工的な膜を使って機械で測る方法」の2つで確認されています。

理由は、最終的な信頼性を確保するためには人体での反応を見る必要がありますが、開発の途中で何度も人の肌を紫外線にさらすのは負担が大きいためです。

  • in vivo(イン・ビボ): ラテン語で「生体内で」という意味です。実際に人の背中などに製品を塗り、紫外線を当てて反応を確認します。
  • in vitro(イン・ビトロ): 「ガラスの中で」という意味です。プラスチックの板や試験管の中で、機械(分光光度計)を使って紫外線の通り抜けにくさを測ります [59]。

このように、厳しい最終チェックには「in vivo」、日々の研究や改良には「in vitro」というように、目的によって使い分けられています。

3. in vivo試験のメカニズム:国際基準(ISO)に基づく人体測定(◎)

結論として、現在日本で表示されているSPF・PA値は、国際標準化機構(ISO)が定めた厳格なin vivo試験に基づいています [16]。

作用機序および測定のプロセスは以下の通りです。

SPF(Sun Protection Factor)の測定

SPFは、UVBによって引き起こされる「紅斑(肌が赤くなること)」を指標にします。

  1. 被験者の背中に、何も塗らない部位と製品を「2mg/cm²」塗布した部位を作ります [101]。
  2. ソーラーシミュレーター(太陽光を再現した人工光源)を照射します [101]。
  3. 紅斑を生じさせるのに必要な最小の紫外線量「MED(最小紅斑量)」を測定し、その比率を算出します [125]。
    • 計算式: SPF = (製品塗布部のMED) / (無塗布部のMED)

PA(Protection grade of UVA)の測定

PAは、UVAによって引き起こされる「持続型即時黒化(肌が黒くなること)」を指標にします [13]。

  1. 照射後2〜4時間後に現れる、持続的な色素沈着を最小限に起こす紫外線量「MPPD」を測定します [85]。
  2. その比率である「PFA値(またはUVAPF値)」を算出し、数値に応じて「PA+」から「PA++++」の4段階で表示します [16]。

4. in vitro試験の現状と課題:PMMAプレートによるシミュレーション(○)

結論として、in vitro試験は「PMMA(ポリメタクリル酸メチル)プレート」と呼ばれる表面を荒らしたプラスチック板に製品を塗布し、紫外線の透過率を測定する手法が一般的です [160]。

in vivo(人体試験)と比較した際の特徴と課題は以下の通りです。

  • 簡便性と再現性: 被験者の拘束や紫外線の健康被害を避けられるため、製品開発のスクリーニング(選別)において必須の技術となっています [37][77]。
  • 基材の選択: プレートの表面粗さ(Ra値)が測定値に大きく影響するため、ヒトの肌に近い表面形状を持つプレートの開発が進められています [34][160]。
  • 相関性の問題: 油溶性の紫外線吸収剤がプレートに吸着して数値を過大評価したり、無機粉末(酸化チタン、酸化亜鉛など)の分散が実際の肌上と異なったりすることで、in vivoの結果とズレが生じることが業界の課題とされています [59][95]。

5. 測定の確実性に影響する要因:塗布膜の不均一性(△)

結論として、製品を塗布する際の「膜の厚さ」や「空間的な広がり」が不均一になると、測定されるSPF値は理論値よりも著しく低下することが示唆されています。

近年の研究では、以下の点が指摘されています。

  • 不均一性の影響: 塗布した膜に厚い部分と薄い部分が混在すると、紫外線は薄い部分から優先的に透過するため、平均的な膜厚から期待される防御性能が得られなくなります [10]。
  • 粘性指状現象(Viscous Fingering): 指やアプリケーターで塗り広げる際、周期的な縞模様(縞状の不均一)が自発的に形成されることがあり、これがin vitro測定の再現性を低下させる要因の一つとして報告されています [10]。

このため、より正確な数値を出すためには、単に成分を配合するだけでなく、肌の上でいかに均一な膜を維持できるかという「製剤化技術」が重要視されています(業界慣例)。

FAQ:よくある質問

Q: なぜ測定では「2mg/cm²」という大量の量を塗るのですか?

A: これは国際的な統一基準(ISO)で決まっている量です。しかし、実際の人間の使用量はその半分以下であることが多いため、表示数値通りの効果を得るには「たっぷり塗る」か「2度塗り」することが推奨されています。

Q: in vitro(機械)の試験だけでSPF50と決めてもいいのですか?

A: いいえ。日本を含む多くの国では、公的な表示にはin vivo(人体試験)でのエビデンスが必要です。in vitroはあくまで開発段階の予測や、補助的なデータとして活用されるのが一般的です(業界慣例)。

Q: 海外で買ったSPF50は、日本のSPF50と同じ強さですか?

A: 基本的に現在はISO(国際規格)への統一が進んでいるため、以前より差は少なくなっています。ただし、米国FDA基準と欧州COLIPA/ISO基準では、光源のスペックや計算方法に細かな違いがあり、全く同一の結果にならない場合もあります [40]。

まとめ

SPF・PA値の測定には、人の肌での反応を見る「in vivo」と、機械で分析する「in vitro」の2つのアプローチがあります。人体での試験が最終的な信頼性の根拠となりますが、開発現場では動物愛護や効率の観点から、精度の高い機械測定法の確立も進められています。数値だけでなく「塗りムラ」を防ぐ技術も、日焼け止めの実力を左右する重要な要素です。

参考文献リスト

[1] 日本化粧品工業連合会(編) (1992) 「日本化粧品工業連合会SPF測定法基準」日本化粧品技術者会雑誌, 26(3), 207-212.

[2] 水野 誠 (2013) 「紫外線防御効果測定法に関する最近の動向について」日本化粧品技術者会雑誌, 47(1), 9-18.

[3] 石窪 章, et al. (2003) 「新規 In Vitro 紫外線防御性評価法の開発」日本化粧品技術者会雑誌, 37(1), 10-16.

[4] 井下 美緒 (2014) 「紫外線防御剤を用いた製剤化技術の開発」日本化粧品技術者会雑誌, 48(3), 169-176.

[5] Sohn M., et al. (2017) “Development of a Synthetic Substrate for the In Vitro Performance Testing of Sunscreens”, Skin Pharmacol Physiol, 30(3), 159-170.

[6] 徳永 裕司, et al. (1998) 「UVAによる紫外線防御剤のIn Vitro評価法に関する研究」日本化粧品技術者会雑誌, 32(3), 287-291.

[7] 小川 克基, et al. (1996) 「UVAの光増強作用を取り入れた新しい in vitro SPF 測定法の開発」日本化粧品技術者会雑誌, 29(4), 336-352.

[8] Fujikake K., et al. (2014) “Problems of In Vitro SPF Measurements Brought About by Viscous Fingering Generated during Sunscreen Applications”, Skin Pharmacol Physiol, 27(5), 254-262.

著者プロフィール

藤川 純一(Junichi Fujikawa)

ルリユール合同会社 代表社員 / 化粧品研究者(フォーミュレーター)

20年以上にわたり化粧品処方開発に従事。2014年、西宮市に自社ラボと製造所を設立し、「作る・売る・支える」を自ら体現する。

毎月、百貨店の催事店頭に立ち、延べ数千人の肌悩みに直接向き合う。原料原液シリーズ「GRAND CONC.」を題材に、悩みの原因を皮膚科学の視点から紐解き、「難解な専門知識を、今日から使える知恵に翻訳して伝える」ことを信条とする。

保有許可: 化粧品製造業、化粧品製造販売業 / 発信媒体: Cosmetic Dictionary、Podcast「美の深層」 / 顧問実績: 薬事顧問、化粧品ブランディング、処方開発アドバイザー

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