酒粕美容 vol.1

和食文化の再評価

 2013年に「和食」が、ユネスコ無形文化遺産に登録されたことをきっかけに、日本の食文化は世界的に脚光を浴びています。また近年、食生活の変化などによって、様々な健康上のトラブルが蔓延している国内でも、改めて和食文化の良さが見直されつつあります。
 日本一の酒処・西宮の特産物の
「酒粕」も、日本で古くから親しまれてきた発酵食品で、栄養学的に優れていることはもちろん、他にも多くの機能が報告され、注目を集めている和食材の一つです。ここでは、そんな酒粕に含まれている成分や機能性に着目し、なぜ酒粕が美容や健康に良いのか、その秘密を探ります。

日本酒の造り方

 日本酒は、ワイン等と同様に原料をアルコール発酵させて作られる醸造酒に分類されます。アルコール発酵とは、原料に含まれる糖分を酵母によって分解し、アルコールと炭酸ガスを発生させることを指しますが、日本酒の場合は、原料の米に糖分が含まれていないため、そのままでは発酵ができません。そのため、米に麹を加えることで、米に含まれるでんぷんを糖分に変え、その糖分を酵母によってアルコール発酵させるという方法をとっています。これが「並行複発酵」と呼ばれる世界で唯一の醸造方法です。この過程の副産物として、アミノ酸やペプチドなどが得られます。

酒粕はカスではなく栄養の宝庫

 酒粕とは、先に紹介した、米に麹と酵母を加え、糖化・アルコール醗酵を経て得られたもろみを圧搾することで、日本酒(液体部分)と分離した後に出てくる搾りかす(固体部分)のことです。”搾りかす”とは名ばかりで、酒粕には、日本酒の原料である米やこうじ、酵母由来の炭水化物やたんぱく質、アミノ酸、ペプチド、ビタミンなどの栄養素がギュッと凝縮されており、それはもはや、”カス”などではなく、”栄養の宝庫”といえます。

 白米と比べると、たんぱく質は約5倍、同じく発酵食品である味噌と比べても約1.5倍も含まれています。それでいながら、日本酒を作る際に米由来のでんぷんや糖が分解されているため、炭水化物(糖質)は、白米よりも低くなっており、ダイエット食材としても優秀です。また、たんぱく質のみならず、ビタミン類やアミノ酸も豊富に含まれています。

酒粕に豊富な難消化性たんぱく質

 酒粕に含まれる成分で、特に注目すべきものとして「レジスタントプロテイン」があります。レジスタントプロテインとは、難消化性タンパク質のことで、食物繊維の一種です。酒粕の他に、そばや大豆にも含まれますが、含有量は酒粕が群を抜いています。その理由は酒粕の製造工程にあります。原料である米に含まれる僅かなレジスタントプロテインが、麹と酵母の発酵を経て、酒粕状態になった時には、ギュッと濃縮されているためです。
 また、レジスタントプロテインは、酸に強い性質を持っているため、胃で分解されることなく、小腸にまでしっかり届いて、様々な機能を発揮します。

酒粕の摂取による健康と美容効果

☑️腸内環境改善作用

 酒粕には、レジスタントプロテインという食物繊維が豊富に含まれます。食物繊維は、小腸で消化・吸収されずに、大腸まで達する成分で、便の体積を増やす材料となるとともに、大腸内の環境を改善します。
 欧米の研究では、食物繊維を1日24g以上摂取することで、腸内細菌のうち、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の割合を増やし、腸内環境のバランスを整えることが報告されています。1)
 実際に、酒粕50gを使用した酒粕甘酒300mlを12名の男女に3週間、毎日飲み続けてもらう試験を行ったところ、12名中8名で排便回数が増加し、また12名中10名が排便量が増えたとの回答が得られています。2)

1)厚生労働省 e-ヘルスネット 参照
2)日本醸造協会誌 『健康と美容に貢献する「酒粕」の成分』 参照

☑️肌質改善作用

 腸内環境は、肌の状態とも密接に関わっています。腸には、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3種の菌が存在し、その理想的なバランスは、善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割といわれます。腸内で悪玉菌が優勢になると、便秘になるだけでなく、悪玉菌が作り出す有害物質が全身に巡り、肌荒れや乾燥・くすみなど、お肌にも悪影響を及ぼします。日和見菌は、名のごとく腸内で優勢な菌に加担する性質があるため、良好な腸内環境と美肌を保つには、いかに善玉菌を増やすかが鍵となります。酒粕に含まれる食物繊維は、便秘の改善に加え、善玉菌のエサとなり善玉菌を増やしたり、活発化する作用があります。また、発酵食品には、善玉菌が豊富に含まれており、腸内の善玉菌の数や種類を増やすとされます。よって、食物繊維が豊富かつ発酵食品である酒粕は最強の美容食材なのです。

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